技術コラム

ステンレス製密閉容器の選びかた
2020/12/06 09:00

「湿気や乾燥をなるべく抑えたい」「運搬の際に中身が飛散しないようにしたい」などの場合には、密閉できる容器を選ぶと思います。
とは言っても容器には様々な種類やメーカーがあるため、何を買ったらいいのか迷ってしまいませんか?

ステンレス容器メーカーである弊社でも、大きく分けて2種類の密閉容器があります。
そこから用途に応じて様々な仕様に分かれていきますので、単純に「密閉容器が欲しい」だけでは選びきれないラインナップになっています。
このコラムでは、ご希望に合う「密閉容器の選びかた」について簡単にご紹介します。

このコラムに出てくる密閉容器

クリップ式

キャッチクリップ(パチン錠)付きの容器パッキンを使用します。
容器もしくは蓋にパッキンを取り付け、キャッチクリップで蓋を固定し密閉します。
型式にCTHと入っている製品が該当します。
※容器サイズにより付属品の仕様は異なります。

家庭用品などでも採用されている密閉方法です。

代表製品(CTH)を見る

バンド式

容器レバーバンドパッキンを使用します。
蓋にパッキンを取り付け、レバーバンドで蓋を固定し密閉します。
型式にCTLと入っている製品が該当します。
※容器サイズにより付属品の仕様は異なります。

ペール缶やドラム缶などでも採用されている密閉方法です。

代表製品(CTL)を見る

 

今回はこの2種類の密閉容器のうち、容量が100L以下(内径470mm以下)の製品について重視するポイントに応じてどちらのタイプがよりおすすめかをご紹介します。

良い密閉容器の条件とは

まずは以下のような密閉容器がおすすめです。

  • 容器と蓋の間にシリコンパッキンなどのゴムパッキンが付属している※1
  • 蓋をしっかり閉められる
  • パッキンや蓋が破損しても、その部品のみ購入し交換して使える※2

しっかり密閉でき、パッキンなどの消耗品の買い替えもできるものであれば、長くお使いいただけます。
弊社の2種類の密閉容器は、どちらもこの3つの条件を満たしています。
※1 内容物との相性も大切です。 >【参考】この薬品ってどうやって保管できるの?~薬品に最適なパッキン~
※2 パッキンの定期的な交換をおすすめしています。>【参考】いつ取り換える?ステンレス容器用パッキンの交換目安とは

どのような機能を重視しますか?

「密閉容器だから密閉度重視!」「なるべく安価なものが欲しい!」など、お客さまによって重視するポイントは異なると思いますので、様々な角度からおすすめの密閉方式をご紹介します。

密閉度?/?使いやすさ /?洗いやすさ?/?導入コスト?/?丈夫さ?/?パッキンの耐薬品性?/?誤開封対策?/?内容物が冷えたときの開けやすさ

> 結果のみ見たい方はこちら

密閉度を重視するときは

バンド式がおすすめ

密閉容器といえば一番気になるのが密閉度だと思います。
密閉容器の密閉度は製品によって異なりますが、一般的には簡易密閉構造という「運搬の際に中身が飛散しない」「保管の際にホコリが侵入しない」ような密閉度のものとなります。

弊社の密閉容器においては、クリップ式よりもバンド式の方が密閉性に優れているという結果が出ています。

>【参考】キャッチクリップとレバーバンド 密閉度を比べてみました

より高い密閉性をお求めの場合は、圧力容器などの気密性の高い容器をご提案いたします。詳細はお問い合わせください。

密閉度に関しては、こちらのコラムもおすすめです。> 【実験】密閉容器を倒したときの水の漏れ量はどれくらい?

使いやすさを重視するときは

クリップ式がおすすめ

クリップ式は、バンド式に比べて蓋やパッキンの装着が簡単で、クリップのフックを蓋にかけるだけで簡単に密閉できます。※容量100L以下(内径470mm以下)の場合。100L以上は蓋にパッキンを取り付ける仕様となります。

蓋を開けた際も、バンド式の場合はパッキン付きの蓋とバンドの2種類を置くスペースが必要ですが、クリップ式の場合は蓋だけなので省スペースです。

ただし容器を壁際などに設置する場合は、バンド式がおすすめです(クリップ式は壁側のクリップが干渉するため)。

洗いやすさを重視するときは

バンド式がおすすめ

バンド式はクリップ式に比べて容器に付いている部品数が少ないため、容器の洗浄作業性に優れています。
洗浄性を重視したサニタリータイプのバンド式密閉容器は、衛生管理の厳しい製薬メーカー様に長年採用されています。

導入コストを重視するときは

クリップ式がおすすめ

導入コストはクリップ式 < バンド式となります。
どちらの密閉方式でもよろしければ、クリップ式がおすすめです。

丈夫さを重視するときは

バンド式がおすすめ

バンド式のバンドは、破損した場合にバンドだけ買い替えることができますので、長く使いたい場合にはおすすめです。
クリップ式のクリップはお客さま自身での交換ができない仕様となっており、破損した場合は本体ごと買い替えいただくことがほとんどです。

耐薬品性を重視するときは

クリップ式がおすすめ

ゴム製パッキンと相性の悪い溶剤や薬品を入れて使用したいときには、PTFEパッキンが選択できるクリップ式となります。ただしPTFEパッキンは樹脂製のため、ゴム製パッキンに比べると密閉度は劣ります。
バンド式は構造上、PTFEパッキンが使用できません。
PTFE製以外(フッ素ゴム、クロロプレン、NBR、EPDM)のパッキンであれば、クリップ式・バンド式どちらの密閉容器でも対応可能です。
容器の材質変更(SUS304→SUS316L)やフッ素樹脂コーティングを施工することで、容器自体の耐薬品性を向上させることもできます。

誤開封の対策を重視するときは

バンド式がおすすめ

クリップやバンドは、運搬時などに接触してしまったり引っかかってしまうと開いてしまうことがあります。
バンド式の場合、100L以下のサイズであればレバーバンドに誤開封防止のフックが付いており、フックにある穴を利用して施錠機能を付加することもできます。

内容物が冷えたときの開けやすさを重視するときは

バンド式がおすすめ

密閉時点での温度より開封時の温度が低いと、内部が減圧状態となり開封が困難になることがあります。
バンド式・クリップ式どちらの場合でも、密閉時の温度に戻すことができれば開封しやすくなります。
バンド式の場合、100L以下のサイズであれば外側から容器とパッキンの境が見えるため、その間にヘラなどを差し込むことでさらに開封しやすくできる可能性があります。

形状イメージ
※容量100L以下(内径470mm以下)の場合。100L以上は仕様が異なります。

>【参考】蓋が開かない!ステンレス容器の蓋が開かないときの対処法

最適なのはクリップ式?バンド式?

まとめ

 

MONOVATEの密閉容器は、お客さまのお悩みや課題を少しでも多く解決できるように、様々な仕様の製品をラインナップしています。
オーダーメイドでの製作実績も豊富ですので、内容物や使用用途だけでなく、お客さまの「重視すること」を第一に考えて容器の仕様を決定・製作することができます。
以下は、お客さまとの容器選定のお打ち合わせ時にあった実際の事例です。

選定例:お客さまの希望を重視し、クリップ式を採用

ジャケットタンクのクリップ式はジャケット槽の範囲が狭くなるというデメリットがあるため、弊社では開放型の容器またはバンド式をご提案いたしますが、お客さまのご希望によりクリップ式でのオーダーメイド製作となりました。

お客さまのご希望は、

  • 作業性を重視(バンド式よりもクリップ式の方が蓋の開閉をおこないやすい。)
  • パッキンの耐溶剤性を重視(PTFEパッキンはバンド式にはご用意が無いため)

ということでしたので、この場合にはクリップ式が最適な選択になります。
このように弊社では、お客さまのご希望や実際に作業される方の作業性を考慮した製品を製作することができます。

 

お気軽にお問い合わせください

弊社のステンレス容器は様々なオーダーメイドが可能です。> 製品の特長をみる
「この製品とこの製品の違いはなに?」「この製品が良いと思ったけど、もっと良い製品はある?」などの疑問・質問がございましたら、お気軽にご連絡ください。

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あわせて読みたい記事

そんなに締めて大丈夫?パッキンで見る締め付けトルクの重要性
2020/11/11 09:00

なにかを「しっかり締める」と言ったとき、固定したいものが動かないよう、固く締め付けることを考えてしまいがちです。

しかし、「しっかり締める」というのは、必ずしも「強く締める」と同義ではありません。適切なトルクで締めることが大切です。過度の締め付けは、部品の変形や破損などを引き起こすリスクがあります。

そして、同様に気をつけなければならないのが、過度な締め付けによるパッキンのはみ出しです。配管の間や蓋と容器との間にあるパッキン(ガスケット)が容器・配管の内外にはみ出してしまい、密閉性低下や異物混入の原因となる可能性があります。

今回のコラムでは、この中でもヘルールパッキンの内側へのはみ出しに着目。ヘルールをクランプで締めた場合、締め付けトルクによってどれだけパッキンがはみ出すのかについて実験してみました。

パッキンとガスケット

シール部品としてよく使われている「パッキン」と「ガスケット」には、簡単に以下の違いがあります。

  • パッキン:運動用シール。繰り返し着脱する箇所や回転部分などに使用される。
  • ガスケット:固定用シール。部品や配管などの接続部(静止部分)に使用される。

今回の実験で使うシール部品は、厳密には「ガスケット」と呼称されるものです。しかし弊社では、弊社容器に使用されるものを基本的に「パッキン」と呼んでいるため、このコラム内でもパッキンと表します。あらかじめご了承ください。

1. はみ出したパッキンは異物混入の原因に

ヘルールの間にあるパッキンやガスケットが配管・容器内にはみ出した場合、それが異物混入(コンタミネーション)の原因になることがあります。以下二つの場合を考えてみましょう。

① パッキン自体が異物になる場合

パッキンがはみ出していると、その部分が摩耗し混入する可能性があります。

特に、配管同士の接続部分や配管とアクセサリーとの接続部分のパッキンがはみ出している場合、その部分が内容物によって摩耗しやすいです。これが容器内に混入してしまったり、劣化したパッキンがちぎれ、その破片が混入したりするリスクがあります。

ヘルールの仕組み・パッキン(ガスケット)についてより詳しく知りたい方へ

ヘルールとパッキン(ガスケット)の仕組みや構造などについてより詳しく知りたい方は、「工具不要で洗いやすい!容器や配管に欠かせない『ヘルール継手』」の記事をご覧ください。ヘルール継手に着目してご説明しています。

② パッキンによってできた段差の残留物が異物となる場合

はみ出したパッキンと容器・配管との間には段差が生じます。この余計なスペースに内容物が残留、固着したりすると、あるときそれが剥落し混入する可能性があります。

残留物は定期的に洗浄をすれば除去することができますが、そもそもパッキンがはみ出さないようにすれば、こうした残留物を減らすことができます。

段差は送液効率低下の原因にも...

配管内に段差が生じてしまうとその部分がデッドスペースとなり、送液等の障害になります。送液効率を低下させないためにも、パッキンのはみ出しは好ましくありません。

2. 締め付けトルクによるパッキンのはみ出し比較

それでは、実験をおこなっていきましょう。

配管同士の間にシリコンゴムのパッキンを挟み、クランプバンドで締めます。まずは手締めの状態で確認し、その後トルクレンチと【TSC】クランプバンド用トルク管理ソケットを使い、3N・m~10N・mのトルクでクランプを締め付けます。

そのときのパッキンのはみ出しを、目視とパッキン内径の変化とで確認してみましょう。

ご注意

クランプバンドメーカー様によっては、工具を用いての締め付けを控えるよう注意を促しているところもあります。

手で締めるのが基本ですが、今回は実験のためトルクレンチを用いて強い力で締めています。場合によってはクランプバンドやパッキンの破損を招く可能性もありますので、通常時において工具等で強く締め付けるのはお控えください。

4Sの場合

はじめに、4S(IDF/ISO規格)のヘルールで実験してみます。

まずは手締めの状態で、パッキンがどのような状態になっているのか確認してみましょう。なお、直尺は引っかかりがあることを確認するために使用しています。

手締め時点でも、多少の出っ張りがあります。パッキンの内径はΦ96.86mm。ここから、締め付けトルクを増すにつれ、出っ張りと内径がどう変化していくのかを確認します。なお、今回使用したトルクレンチでは3N・m以下を計測できないため、手締め時の締め付けトルクは記載していません。

画像で見た目での出っ張りの変化を見てみましょう。

目視ではわかりづらいかもしれませんので、パッキン内径の変化を数値で確認してみます。下の表をご覧ください。

締め付けトルク(N・m) 手締め 3.04 5.08 7.00 10.28
内径(mm) Φ96.89 Φ96.34 Φ96.19 Φ95.89 Φ95.38

パッキンが内側に出っ張ることで、数値上からでも内径が小さくなっていくのがわかります。

2Sの場合

同様に、2Sのヘルールでも確認してみましょう。

手締めだと以下のような状態になります。パッキンの内径はΦ46.93mmです。

4Sのときと同様、締め付けを強めるとパッキンがどのように変化していくのかを見てみましょう。

4Sよりも2Sのほうがはみ出しの変化が大きいのがわかります。締め付けトルク約3N・mの時点でも、手締めのときに比べて大きくはみ出しています。数値上では、以下のように変化しました。

締め付けトルク(N・m) 手締め 3.02 5.24 7.10 9.20
内径(mm) Φ46.93 Φ45.95 Φ45.26 Φ44.89 Φ44.47

4Sの場合では、約3N・mから10N・mに締め付けを増すと内径は約1mm小さくなったのに対し、2Sでは約3N・mから9N・mまで締め付けを増すと、内径は約1.5mm小さくなりました。

3. 過度の締め付けを避けるために

今回の実験では、2S、4Sのどちらの場合でもパッキンの内側へのはみ出しが確認できました。

一般的に、締め付けトルクは3N・m前後が適当であるとされています。ですから、3N・m時点程度でのパッキンのはみ出しは許容しなければなりませんが、それ以上に締め付けを強めてしまうとデットスペースを生み出したり、不必要にリスクを高めることになります。

こうしたリスク・ムダをなくすためには、クランプを軽く手締めしたうえで、トルクレンチで締め付けトルクが適切にするのが望ましいです。

これに最適なのが【TSC】クランプバンド用トルク管理ソケット。市販のトルクレンチにこのソケットを取り付けることで、クランプバンドの締め付けトルクを測定できます。必要以上の力での締め付けを防ぎ、締め付けトルクの標準化に役立つ製品です。

複数のメーカー・モデルのクランプバンドに対応しているため、これひとつあれば安心です。もし対応できない規格であったとしても、オーダーメイドにて製作可能ですので、お気軽にお問い合せください。

トルク管理ソケットの詳細を見る

4. まとめ

クランプバンドを締めるときには、必ずしも強い力を加えればよいというわけではありません。今回の実験からわかるように、必要以上の力で締めてしまうとパッキンがはみ出してしまい、さまざまなリスクを生じさせることになります。

これを防ぐためにはトルク管理が必要不可欠。すべての作業者がどのような状況でも、適切なトルクで締め付けをできるようにしておくのが理想的です。

MONOVATEではご紹介した【TSC】のほかにも、お客さまのご要望に応じて「トルク管理できるボトル」などの特注製品を製作できるほか、そもそも内側にはみ出しにくい「外周にSUS製のリングを付けた特殊なパッキン」もご紹介できます。状況に応じたトルク管理ツールで、無用なリスク・ムダを低減しましょう。

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「パッキンが膨潤するとどうなるの?」実験してみました
2020/10/05 09:00

そもそも膨潤とは

パッキンと液体の相性によっては、パッキンが液体を吸収して膨張し、ブヨブヨになることがあります。このことを「膨潤」と呼びます。
これは液体がパッキンのゴムの分子間に入り込んでしまうことから発生する現象です。
イメージとしては、わかめを水で戻したときのような状態が近いでしょう。

膨潤がもつリスクとは

膨潤には以下のような困りごとを引き起こすリスクがあります。

  • パッキンのサイズが大きくなり設置箇所に合わなくなる、密閉性が低下する
  • 強度が下がり破損する、異物として混入する
  • パッキンの交換サイクルが短くなり、コストが高くなる

このため、膨潤するかどうかを含め、パッキンと液体の相性を確認するのはとても重要なことです。

実際膨潤するとどうなるのか

こちらはフッ素ゴムを除光液(主成分:アセトン)に4日間程浸したものです。

実験前とだいたい同サイズのフッ素ゴムに比べ、サイズが大きく膨張していました。
また、手で触った感触もかなり柔らかくブヨブヨになっています。

寸法、重量も大きく変化していました。

実験前寸法 実験後寸法 寸法変化率 実験前重量 実験後重量 重量変化率
フッ素ゴム 14mm 20mm 142.9% 1.6g 2.44g 152.5%

同じ条件で実験を行った他の材質には、フッ素ゴムほどの大きな変化はみられません。

ゴムがボロボロになったものも

こちらはクロロプレンゴムを塩素系漂白剤(主成分:次亜塩素酸ナトリウム)に浸した結果です。
少し動かしただけで黒いゴムのかけらがボロボロと出てきます。
また周りに付いた漂白剤を拭き取ると黒い液体が付着し、ゴムが溶解しているような状態です。

体積の大きな変化は見られませんが、液体との相性が悪いことがわかります。

代表的な薬品に適したパッキンを知りたい方はこちら

この薬品ってどうやって保管できるの?~薬品に最適なパッキン~

このコラムを読む

まとめ

  • パッキンが膨潤する=寸法、重量に大きく変化が出る
  • 相性によっては、ゴムが崩れたような状態になるものも

当社では、内容物に合わせてステンレス容器や周辺機器に付属するパッキン材質を変更することが可能です。
すでに当社の容器を使用されているお客様でも、パッキン単体での購入が可能ですのでお気軽にお問い合わせください。

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手作業を減らそう!省力化で作業効率を上げるステンレス製品
2020/09/08 09:00

「製造業の省力化」というと、手作業から自動化への移行を思い浮かべる方が多いかもしれません。
手作業を機械に置き換え、手作業をなくすのが自動化ですが、多品種少量生産や試作開発などの小規模生産となると、機械への置き換えが現実的ではない工程も多いと思います。

自動化できない工程においても、まずおこないたいのが、手作業を減らす省力化(省人化)です。
省力化は、機械などを導入して手作業を減らしたり作業の合理化をおこなって労力を省いていく取り組みで、作業効率の向上やコストダウンには欠かせません。
省力化の方法は多岐にわたりますが、このコラムではステンレス製品に関係する3つの省力化についてご紹介します。

1. 大型で重い容器を持たずに洗う

大型容器、重い容器は洗いにくい

径の大きな容器や重い容器の洗浄工程は、作業者の負担が大きい工程です。
複数人で作業する場合はその分工数がかかってしまいます。

このような場合には、反転機能を付けたステンレス容器のご使用がおすすめです。

  • 洗浄時に容器を持つ必要がなくなり、洗浄時間の短縮になる。
  • 1人で作業できる。

取り付けた撹拌機が重い

撹拌機(攪拌機/かくはん機)を取り付けたステンレス容器の場合、容器の洗浄時に撹拌機を取り外します。
大型容器に取り付ける撹拌機の場合は重量のあるものや高い位置に取り付けているものが多く着脱作業は慎重におこなう必要があります。
そのため着脱に時間がかかったり複数人での作業となってしまい工数がかかってしまいます。

このような場合には、撹拌機の昇降機能を付けたステンレス容器や、撹拌機用リフターがおすすめです。

  • 容器からの着脱が不要で容器が洗いやすくなる。
  • 撹拌機の昇降が安全かつ1人でおこなうことができる。

2. 溶解・撹拌作業の時間を短縮する

粘度のある液体の撹拌に時間がかかっている

粘度のある液体は撹拌しにくく工数がかかるだけでなく、混ぜきれなかった部分はロスとなってしまいます。

加温が可能な内容液の場合には、ジャケット付きのステンレス容器がおすすめです

  • 加温することで粘度が下がり撹拌しやすくなる。
  • 撹拌時間が短縮できる。
  • 撹拌不足によるロスが減る。

液が焦げやすい

液を温めたい場合に手軽なのが直火での加温ですが、火加減の調節や焦げないようにかき混ぜるなどの手作業が必要になります。
特に粘度が高い液や焦げやすい成分の液の場合は、焦げないようにこまめに確認しなければいけません。

このような場合には、ヒーター付きのステンレス容器やジャケットカクハン機取付座が付いたステンレス容器がおすすめです。

  • 温度調節しやすい。
  • ジャケットの場合、湯煎のようにやさしく加温でき焦げない。
  • 加温時に撹拌機を併用すれば、内容液を均一に撹拌できる。

溶解と撹拌の工程が分かれている

溶解と撹拌の作業工程が分かれていると、移し替えでロスが発生したり、異物混入なども起こりやすくなります。
また、手作業でかき混ぜたり、ミキサー等を持ちながらの撹拌は作業者に負担がかかってしまいます。

このような場合には、ジャケットカクハン機取付座が付いたステンレス容器がおすすめです。

  • 内容液を加温しながら均一に撹拌することができる。
  • 溶解と撹拌の工程が1つになることで移し替えがなくなり、ロスが減る。
  • 撹拌時に撹拌機を持たなくてよい。
  • 撹拌している間に別の作業をおこなうことができる。

3. 手作業での液の移し替えをやめる

液の移し替え作業を手作業でおこなっている

撹拌などを経てできあがった液を別の容器や装置へ手作業で移すとロスが発生しやすく労力もかかります。
また、異物混入などのリスクも高まります。

このような場合には、ポンプ付きのステンレス容器や圧送ユニット付きの圧力容器がおすすめです。

  • 容器から装置へ内容液を直接送ることができる。
  • (圧送の場合)ポンプ不要で内容液を取り出せる。

撹拌後の工程が別のエリアにある

液体の撹拌後、移し替えたい容器や装置が離れたエリアにある場合、液が入った重い容器を持ち運ぶのは重労働です。

このような場合には、キャスターカクハン機取付座がついたステンレス容器がおすすめです。

  • 重い容器を持たずに運べる。
  • 撹拌機を取り外さずに移動できる。

【PDF資料無料プレゼント】省力化で作業効率を上げるステンレス製品

下記フォームに必要項目を入力・送信していただくと、このコラムでご紹介した3つの製品のカタログをまとめたPDF資料をダウンロードできます。

なお、このページには掲載していないオーダーメイド事例のご紹介もあります。PDFですので、そのまま社内の回覧にご活用ください。

ステンレス容器周辺でできる異物混入対策~撹拌・洗浄工程~
2020/08/04 09:00

衛生グレードの高い場所で使われるステンレス容器。そのような現場では、異物混入対策に注力されていることも多いです。

この記事の前編「ステンレス容器周辺でできる異物混入対策~貯蔵・投入工程~」では、貯蔵・投入工程において行える異物混入の対策手法についてご説明しました。

続く後編では、撹拌と洗浄の工程でご提案できる異物混入対策方法についてご説明します。

前編のおさらい?貯蔵・投入工程での異物混入対策

前編である「ステンレス容器周辺でできる異物混入対策~貯蔵・投入工程~」でご説明した内容を、簡単に振り返ります。

  • 「長期保管でパッキンが劣化し、混入してしまう」
    →内容物に合った材質を選択しましょう。
  • 「内容物の種類や残量を確認するために蓋を開放し、異物が混入する」
    →容器自体にマーキングしたり窓を取り付けたりする方法のほか、アクリル蓋やレベル計を付ける方法があります。
  • 「投入時に蓋を開放して、そこから容器外の異物が混入してしまう」
    →必要なスペースだけを開閉できる割蓋などで、開放部を必要最低限にしましょう。
  • 「投入前にビーカーで計量した原料に異物が混入してしまう」
    →ビーカー専用の蓋を製作できます。

以下では、前編の貯蔵・投入工程に続いて、撹拌・洗浄工程でできる異物混入対策についてご紹介します。

撹拌工程の異物混入リスクと対策

「撹拌機を設置時、開放部から異物が混入してしまう」

→開放部を必要最低限にしましょう

蓋に撹拌機用の切り欠きを付ける方法

撹拌をする際に蓋が開いていると、作業者の髪の毛や虫などが落下、混入する可能性があります。それを防ぐのに効果的なのが、切り欠き付きの蓋に可搬型の撹拌機を付けるという方法です。

蓋をしたまま撹拌できるよう、撹拌機の軸を通すのに足りる切り欠きを蓋に設けることができます。また、特注でその切り欠きにカバーを取り付けることもできるため、撹拌しない際には撹拌機を取り外したうえでカバーをして、さらに異物混入防止性能を高められます。

ヘルール接続の撹拌機で容器内を密閉する方法

容器内を密閉したい、という場合にはヘルール接続できる撹拌機がおすすめです。この方法であれば開放部が生じませんので、上記の方法に比べさらに衛生的です。

切り欠き部にカバーを取り付けた蓋

切り欠きにPTFE製のカバーを付けた割蓋を採用したインコネル製タンクです。撹拌機を使わないときにはカバーを閉じることにより、異物混入を防ぎます。

製品を見る

ヘルール接続できる撹拌機

MONOVATEオリジナルの撹拌機は、ヘルールで容器の蓋部分に接続できる立型撹拌機です。密閉撹拌ができるため、サニタリー性の求められる現場に最適です。

製品を見る

「撹拌機の軸シール部で生じる摩耗粉が混入してしまう」

→摩耗したシールを回収できる、ゴミ受け搭載の撹拌機を使用しましょう

一般的な撹拌機の場合、撹拌機を動作させると軸シール部から摩耗粉が生じ、それが混入する可能性があります。

しかし、MONOVATEのベルヌーイ流撹拌機【NTMA/NTME】ならそのリスクを低減。軸シール部から発生した摩耗粉を受け止めるゴミ受けを標準搭載することにより、摩耗粉が容器内に落下しにくくなっています。

通常、それほど着目されない部分ですが、衛生グレードの高い場所ではこうしたコンタミリスクを意識されることも多いようです。

洗浄工程の異物混入リスクと対策

「洗浄液や異物が容器のスキマに残り、その後の使用時に混入してしまう」

→スキマの少ない容器を使用しましょう

容器やその他機器を使用後、キレイに洗浄をしたつもりでも汚れや異物が容器のスキマに残ってしまったり、洗浄に使用した液自体が残存してしまったりすることもあります。

それを防ぐのに効果的なのが、スキマの少ない容器。サニタリー容器サニタリービーカーは取っ手や縁巻き部のスキマをすべてなくしており、異物や液が残存しません。

液残りしないサニタリー容器

ステンレスビーカーの比較

また、ひしゃくサニタリーバットも同様にスキマがないため、洗浄が楽であるうえに汚れが残りにくいです。

当社ではこのほかにも洗浄しやすく、汚れが残りにくいバルブ配管もラインナップ。容器とあわせてご提案いたします。

【技術コラム】洗浄時間を短縮できるスキマの無い容器

容器の縁巻き部分に内容物や汚れが
入り込み、取れなくなった。
curl-yogore1
取っ手に汚れが溜まってしまい、
困っている。
handle-yogore1
洗浄工程で、容器の隙間に入った汚れや、
洗浄液の除去に時間がかかる。
tank-wash1

より詳しい説明を見る

まとめ

今回は前編と後編にわたり、貯蔵から投入、撹拌、そして洗浄工程において当社が提案可能な異物混入対策についてご紹介しました。

異物混入のリスク要因はさまざまです。当社ではそれぞれのリスク要因を低減するための対策を、お客さまが必要とするグレードに応じてご提案できますので、お気軽にご相談ください。

【PDF資料無料プレゼント】「ステンレス容器周辺でできる異物混入対策とは~撹拌・洗浄工程~」

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なお、このページでは掲載していない製品も一部ご紹介しています。PDFですので、そのまま社内の回覧にご活用ください。

ステンレス容器周辺でできる異物混入対策~貯蔵・投入工程~
2020/07/08 09:00

錆びに強いのが特徴的なステンレス容器。
そんなステンレス容器を使用している環境は、衛生グレードが高く、異物混入の対策がしっかりされている場所が多いです。
このコラムでは、「ステンレス容器周辺でできる異物混入対策」を工程別にご紹介します。
今回は前編~貯蔵・投入工程~です。(後編~撹拌・洗浄工程~はこちら

貯蔵工程の異物混入リスクと対策

「長期保管でパッキンが劣化し、混入してしまう」

→内容物に合った材質を選択しましょう

特に内容物が薬品などの場合は、パッキンの材質選定が重要です。
たとえば弊社のパッキンが付属する容器の多くはシリコンゴムが標準ですが、 内容物の相性が悪いとパッキンが膨潤・剥離して異物混入につながる恐れもあります。

それぞれの薬品に合ったパッキンの材質を選択しましょう。

薬品とパッキンの相性について知りたい方はこちら

この薬品ってどうやって保管できるの?~薬品に最適なパッキン~

このコラムを読む

「内容物の種類や残量を確認するために蓋を開放し、異物が混入する」

→開け閉めしなくても内部を確認できる方法があります

内容物の種類を確認したい場合…印字やラベリング、容器に着脱式の窓を設置するのがおすすめ

容器自体に印字やラベリングをする方法と、容器に透明な部品(窓)を取り付ける方法があります。

内容物の残量を確認したい場合…アクリル蓋やレベル計がおすすめ


またコストは上がりますが、レベルセンサーを取り付けた実績もございます。「残量が減ったら自動で補充」のように他の工程と連携が可能です。

投入工程の異物混入リスクと対策

「投入時に蓋を開放して、そこから容器外の異物が混入してしまう」

→蓋の開放部を必要最低限にしましょう

投入に必要なスペースだけ開閉できる、「割蓋」「開閉蓋」がおすすめです。

「蝶番は洗浄しづらい・金属接触をなるべく避けたい…」そんな場合には、蝶番を使用しないタイプがおすすめです。


割蓋 採用事例

蝶番を使用しない開閉蓋

蓋のカスタマイズについて知りたい方はこちら

作業コストを削減!目的別にステンレス蓋のカスタマイズ事例を紹介

このコラムを読む

「投入前にビーカーで計量した原料に異物が混入してしまう」

→ビーカー専用の蓋も製作可能です

ガラス製容器に入った原料を使用する場合、ガラスが割れて混入するリスクを避けるために破損の可能性が低い金属や樹脂でできた計量容器に移し替えてから投入することも多いようです。

計量~投入の間が空いてしまうほど空気中の異物等が混入してしまう可能性も高まるので、かぶせるだけの簡易的な蓋でも使用すればリスク低減につながります。

【PDF資料無料プレゼント】「ステンレス容器周辺でできる異物混入対策とは~貯蔵・投入工程~」

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容量やサイズなどのスペックを一覧でご覧いただけます。PDFですので、そのまま社内の回覧にご活用ください。

ステンレス製品の滅菌で気になる3つのこと
2020/06/08 09:00

ステンレスは滅菌できますが、ステンレス製品には滅菌できるものとできないものがあります。
滅菌といってもその種類は様々ですが、今回はMONOVATE製のステンレス容器(SUS304/SUS316L)をオートクレーブ(高圧蒸気滅菌 / 121℃ 20分)で滅菌する場合についてご紹介します。
製品毎の滅菌可否についてはお気軽にお問い合わせください。

 

ステンレス容器の耐熱温度に関しては、こちらのコラムをご覧ください。

1. ステンレス製品って滅菌できる?

滅菌できるステンレス製品の例

目盛付容器(蓋無しイメージ)

樹脂やゴムなどの部品が付いていないオールステンレス製の製品(=ステンレスだけでできている)であれば、基本的にオートクレーブでの滅菌が可能です。
病院や研究室などでステンレス製品が使われているイメージはありませんか?ステンレス製品は、滅菌を前提とする場所での使用にも適しています。

滅菌できるか確認が必要なステンレス製品の例

  • 樹脂製部品が付いている
  • パッキンなどゴム製部品が付いている
  • キャスターが付いている
  • ラベルが付いている

 

このような製品は、ステンレス部分は滅菌可能でも取り付けている部品が滅菌できない(部品の耐熱温度が低く滅菌できないなど)可能性があるため事前に確認が必要です。
製品の耐熱温度をお確かめいただくか、弊社までお問い合わせください。
なお、弊社製ステンレス密閉容器で標準付属するシリコンパッキン(【PQA】【PQB】【PQL】)は蒸気滅菌が可能です。

2. ステンレス製品の滅菌で気を付けることは?

  • 滅菌できない部品は外す
  • 外せる部品は外して隅々まで滅菌できるようにする
  • 容器は必ず開放状態(蓋を開けた状態)で滅菌機に入れる
  • 器具など細かい部品はカゴなどに入れる
  • 滅菌後はよく乾燥させる

 

その他、お使いの滅菌機の使用方法をご覧ください。

3. ステンレス製品を滅菌して錆びたりしない?

滅菌後の乾燥が不十分ですと錆びる可能性があります。

ステンレスは錆びないのではなく錆びにくい金属であり、錆びる条件が揃えば錆びてしまいます。
例えば滅菌後に水滴が残った状態で放置すると、通常の洗浄時と同様に錆びたりもらい錆となる可能性がありますので、滅菌後の乾燥は十分に行ってください。

ステンレスの錆びについてはこちらのコラムをご覧ください。

滅菌することが前提なら、特におすすめしたいステンレス製品

水滴が溜まりにくく、滅菌後の乾燥がスムーズに行えるステンレス製品

汚れや水が溜まる部分を無くしてサニタリー性を向上させたステンレス製品があります。
製品本体には水が入り込む部分が無いため、滅菌後の乾燥もスムーズに行えるだけでなく、洗浄性にも優れており異物混入対策やコンタミ対策にもなります。

オートクレーブで滅菌できるステンレス台車

通常の容器運搬台車は滅菌できない仕様となっています。
オートクレーブ適応運搬台車【KMS-A】は、オートクレーブでの滅菌が可能なキャスターを取り付けた、滅菌可能な台車です。

KMS-A,KMS-A-TP製品画像

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滅菌をサポートするステンレス製品

滅菌機に器具等を入れる場合に活躍する、ステンレス製の滅菌缶・滅菌カゴの製作も承っています。
滅菌機のサイズや入れたい器具のサイズに合わせてオーダーメイドで設計・製作できます。

カゴのオーダーメイドについて見る

 

「ここの使いやすさを優先したい」というオーダーメイドが可能です。

弊社の容器は特に、日本国内の製薬メーカー様で高い評価をいただいています。メガファーマをはじめ、ジェネリック医薬品企業や健康食品メーカー様にも長年納入しております。
用途や使用環境を考慮するだけでなく、「滅菌に対応した製品が欲しい」「コンタミ対策を重視したい」など、お客様のご要望を取り入れたステンレス製品を設計・製作することができます。
お探しのステンレス製品がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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錆びない?消毒液とステンレス容器の相性とは
2020/05/12 09:00

最近、アルコールや次亜塩素酸ナトリウム液の需要が高まっています。お客さまの会社でも、

  • 社内の衛生環境保全のために、消毒液を購入した
  • 社員の健康確保のために消毒液を用意し、分配している

といった対応をとられているのではないでしょうか。

一斗缶やバッグインボックスなど大容量のものを購入し、それを小分けにする。また、消毒液の種類によっては希釈する必要がある場合もあるかと思いますが、このようなときにおすすめなのが「小分けに適したステンレス製品」です。

このコラムでは、「そもそも消毒液とステンレスの相性ってどうなの?」ということに加えて、消毒液を小分けにするのに最適な2つのステンレス製品をご紹介します。

1. 消毒液をステンレス容器に保管しても大丈夫?

まず、消毒液とステンレス容器との相性を確認しておきましょう。このときに着目したいのは、①本体(ステンレス)と消毒液の相性②パッキンと消毒液の相性のふたつです。

以下では、一般的によく使われるアルコールと次亜塩素酸ナトリウム液の相性についてご説明します。

消毒液とステンレスの相性

  • アルコール (エタノール):
  • 次亜塩素酸ナトリウム液:△

アルコールはステンレスに影響を及ぼしません。そのため、アルコールをステンレス容器の中に保管するのはもちろんのこと、ステンレス容器自体をアルコールで消毒することもできます。

対して、次亜塩素酸ナトリウム液を扱う場合には、その濃度に注意が必要です。

北里環境科学センターほかの研究1 によれば、濃度0.1%の次亜塩素酸ナトリウム液にSUS304を浸漬させたところ翌日には一部に錆びが発生。そのため、市販されている濃度5%程度の次亜塩素酸ナトリウム液(ハイター等)をそのまま入れるのには適していません。

一方、山形大学の研究2 では、濃度0.05%の次亜塩素酸ナトリウム液に72時間SUS304を浸漬したところ、特に影響がなかったという結果が出ています。なお、物を拭くなどの消毒用途では濃度0.05%で使用するのが一般的です。

そのため、次亜塩素酸ナトリウム液の保管という観点からすれば、ステンレス容器はあまり適していないといえます。ただし、液の移動などに便利なステンレス製ビーカーやひしゃくで扱う分には問題ないでしょう。その際には洗浄を怠らないようにするのが肝心です。

ご注意

○次亜塩素酸ナトリウムは希釈後になるべく早く使い切る必要があります。時間の経過とともに有効塩素濃度が低下するためです。長期的な保管、作り置きなどはしないようにしましょう。

○濃度60%以上のアルコールは消防法上危険物(第四類・アルコール類)に分類されます。80L以上を貯蔵する場合には届出が必要になりますので、注意が必要です。詳しくは所轄消防署などにご確認ください。

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耐食性を向上させた容器もあります

通常のSUS304よりも耐食性に優れているのがSUS316Lです。詳細は「錆びに強いステンレスのハイグレード素材SUS316Lをご存知ですか?」でご紹介しています。

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ステンレスはあくまでも「錆びにくい」材質。「ステンレス容器を長持ちさせる洗浄方法とは?」で正しい洗浄方法を知り、ステンレスの錆びを防ぎましょう。

消毒液とパッキンの相性

当社の容器に使われているパッキンの標準材質はシリコンです。シリコンと消毒液との相性を確認しましょう。

  • アルコール (エタノール):
  • 次亜塩素酸ナトリウム液:

どちらの消毒液とも、シリコンに対して影響を与えません。また、これ以外の材質ではPTFE(フッ素樹脂)も問題なく使用できます。

ご注意

パッキン材質やステンレスと使用する消毒液の相性は、必ずお客さまご自身でもご確認ください。濃度や使用条件により、劣化や腐食が生じる可能性もあります。

特に次亜塩素酸ナトリウム液は強力な酸化作用を有しており、その濃度により影響の程度も変わります。

2. 消毒液を保管・小分けするのに最適な2つのステンレス製品

ステンレス製品でアルコールを扱うのは問題がないこと、次亜塩素酸ナトリウム液については濃度や接液時間によって使用できることをご紹介しました。

第2章では、消毒液を保管・小分けするうえで便利な当社ステンレス製品を2つご紹介します。

保管から小分けまでできる「レベル計・バルブ付密閉容器」

エタノールなどのアルコールを保管し、さらに小分けするのに便利なのが【CTHV-LV/-LV-FL】レベル計・バルブ付密閉容器です。

クリップ式の密閉容器である【CTH】にバルブを取り付けました。バルブももちろんステンレス製、シール部はPTFEのため、腐食・膨潤・溶解などの心配はありません

さらにレベル計を取り付けることで、蓋を開けることなく残量確認できるようにしています。レベル計のチューブ部分はPFAで、アルコールなどに侵されません。

無水エタノールを希釈して使う必要がある場合でも、この容器で希釈から保管、小分けまで可能です。

ご紹介した製品はこちら

【CTHV-LV】レベル計・バルブ付密閉容器

製品を見る

【CTHV-LV-FL】CTHV-LVに脚が付いたモデル

製品を見る

消毒液をスムーズに排出するために

CTHVなどの密閉容器は、蓋を開けないと排出が困難です。しかし、都度蓋を開けないといけないのは不便ですし、衛生的にも気になりますよね。

そこで、蓋にエアー抜き用の小さな穴をあけたり、そこにバルブを取り付けたりすることで、蓋を開けなくてもスムーズに排出できるようにすることも可能です。特注加工についてはお気軽にご相談ください。

「排出しやすい密閉容器」の特注事例

化学メーカー様に納入した、アルコール供給用の容器です。排出性を向上させるためにエアー抜き穴を加工していますが、ここにバルブを取り付け、異物混入リスクを低減することもできます。

製品を見る

製品について問い合わせる

口の小さな容器にも注ぎやすい「サニタリー性の高いビーカー」

消毒液を口の小さな容器へ小分けするのに便利なのが、【BK-SMA-DP】液だれ防止ビーカーです。

動画で製品をチェック

このビーカーはその名の通り、口からの液だれを防止するビーカーです。上の動画では、エタノールを移し替える様子をご覧いただけます。

エタノールの表面張力は水よりも小さく、比較的液だれしやすいのですが、このビーカーでは液をしっかり切って注ぎます

SUS316Lを採用しているので、耐食性にも優れているのが特長です。

ご紹介した製品はこちら

【BK-SMA-DP】液だれ防止ビーカー

製品を見る

【特注事例】ボトルからさらに小分けできる「バルブ付ボトル」

バルブのシール部やキャップのパッキンにはPTFEを採用しており、耐薬品性に優れています。ボトル内で希釈し、そのまま使用する場合などにおいて便利にお使いいただけます。

このバルブ付ボトルは特注品です。MONOVATEでは、当社の既存のラインナップ製品に追加工を施すのはもちろんのこと、完全オーダーメイドのステンレス製品の製作も承っています。材質を変え、優れた耐食性を誇るハステロイCでの製作も可能です。

なお、特注製品の場合、お客さまのお手元に届くまでにお時間を頂戴します。数日中に入手されたい場合には、先ほどご紹介したCTHV(バルブ付タンク)BK-SMA-DP(液だれ防止ビーカー)などがおすすめです。

3.まとめ-アルコールなら問題なく使えます

このコラムでは消毒液とステンレス容器との相性、そして消毒液を扱うのに適した2つの製品をご紹介しました。

ご説明しましたとおり、次亜塩素酸ナトリウムの場合にはその濃度や接液する時間によって、どの程度ステンレスに影響が出るかが変わります。そのため、ステンレス製品で扱う場合には検討が必要です。

一方、アルコールであればステンレス、シリコンパッキンのどちらにも影響を与えることはありません。ご安心してお使いいただけることでしょう。

社員のみなさまの健康確保、社内の衛生環境維持にぜひ当社のステンレス製品をお役立てください。

お問い合わせ

製品のご希望はもちろんのこと、「こんな消毒液を扱いたいけど大丈夫なの?」などと思われることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。お客さまのご希望に沿える形状・加工・素材をご提案します。

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[evaluation]

参考文献

1) 岡上 晃・小澤 智子ほか(2015),複合型塩素系除菌・洗浄剤の各種環境表面素材に対する影響に関する検討,日本環境感染学会誌,30(5),pp.325-330

2) 白石 正・仲川 義人(1999),各種消毒剤の金属腐食性と殺菌効果に及ぼす腐食の影響,環境感染,14(4),pp.275-279

ユーザー必見!ステンレス容器使用時のトラブルシューティング
2020/04/03 09:00

ステンレス容器使用時のトラブルシューティング

ステンレス容器の使用時に発生しやすいトラブルやお困りごとについてまとめました。
MONOVATEの容器をご利用いただいているお客様からお問い合わせいただいた内容を中心に、対処法を解説いたします。

また、ここに記載がない内容でご不明点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

目次

容器の使用について

容器が錆びてしまった

使用環境にもよりますが、買い替えをおすすめします。

錆びた箇所から容器が欠損するなど、異物混入のリスクが高まります。

※錆びを粒子の細かい研磨剤などで擦ってある程度除去することもできますが、擦り傷が付き、新たな錆びの原因となる場合もございます。お客様ご自身の責任においてお試しください。 また、錆びを取った後はすぐに洗浄・乾燥させてください。

 

「買い替えたのにまた錆びた…」を防ぐために

錆びの再発を防ぐためには、発生原因を突き止め、それに合わせた対策をとる必要があります。
買い換えの際、錆びの再発対策などでお困りでしたらお気軽に弊社までお問い合わせください。

錆びの原因と対策について詳しく知りたい方にオススメのコラム
条件によってはすぐ錆びる!?ステンレス容器が錆びる原因と対策

「より錆びに強いステンレス」について詳しく知りたい方にオススメのコラム
錆びに強いステンレスのハイグレード素材「SUS316L」をご存知ですか?

容器の蓋が開かない

容器を温水などで外部から温めてみてください。

クリップやバンドで締めこむタイプの容器では蓋を外しにくくなることがあります。
これは内容物の温度が蓋を閉めた時よりも冷えて、容器内が減圧状態になり、蓋と容器が密着してしまっているからです。
少し時間がかかりますが、湯煎などで内部の温度を上げると蓋が開きやすくなります。

また、対策として容器の蓋に外気導入用のバルブを取り付けたり、エアー抜き穴を開けてゴム栓を付けておくこともできます。

エアー抜き穴を加工した事例を見る

容器の寿命は?

一定の寿命や保証期間は定めておりません。

内容物や頻度など、使用環境によって変わるため、弊社として一定の寿命や保証期間等は定めておりません。

錆び具合・汚れ具合など、使用環境で求められる衛生グレードを鑑みて買い替えをご検討ください。

パッキンについて

パッキンのセッティングが難しい(クリップ式容器・バンド式容器)

パッキンセッティングのコツを紹介した動画をご覧ください↓

※クリップ式容器、バンド式容器の容器径が大きいタイプ(565mm~)は、動画とパッキンの形状が異なります。

 

クリップ式容器(A型パッキン)


セッティングのコツ
パッキンを一部分容器の縁にセットし、その箇所から少しずつ広げていきます。

バンド式容器(L型パッキン)


セッティングのコツ
蓋にパッキンを一部分セットし、そこから両手でなぞるように嵌めていきます。

パッキンが劣化してしまった(ちぎれている/臭う/変色している 等)

買い替えをおすすめします。

パッキンがブヨブヨになっている(膨潤している)、ちぎれている、臭う、変色している等の場合は
容器の密閉性を損なったり、異物混入してしまうなど内容物の品質に悪影響を及ぼすこともあります。

パッキン等の消耗品類は1品から購入可能ですので、容器をご購入いただいた代理店様へお問い合わせください。

また適合するパッキンの種類がわからない・材質を相談したい場合には弊社へお問い合わせください。

 

気にしてますか?パッキンと内容物には相性があります。

パッキンの劣化原因には、経年劣化の他「パッキンと内容物の相性が悪い」場合もあります。
内容物に適したパッキンの材質を選定することで、パッキンをより長持ちさせることも可能です。

パッキンと内容物の相性でお困りでしたらお気軽に弊社までお問い合わせください。

一般的なパッキン交換目安を知りたい方にオススメのコラム
いつ取り換える?ステンレス容器用パッキンの交換目安とは

弊社で主に扱うパッキン材質を性質別に分類したパッキン特性一覧表もご覧いただけます。

 

パッキンの寿命は?

一定の寿命や保証期間は定めておりません。

内容物や頻度など、使用環境によって変わるため、弊社として一定の寿命や保証期間等は定めておりません。

劣化具合と、使用環境で求められる衛生グレードを鑑みて買い替えをご検討ください。

「○回使用したら/○日使用したら交換」のようにあらかじめ交換サイクルを決めておくのもおすすめです。

消耗品・部品の購入について

消耗品・部品(パッキン・蓋など)の購入方法は?

容器をご購入いただいた代理店様からご購入ください。

代理店様が不明な場合や、適合する型番が不明な場合は弊社へお問い合わせください。
容器のサイズ(径)、外観写真をお送りいただくとスムーズです。

単品で、1つだけの購入は可能か?

どの消耗品・部品も1点から購入可能です。

 

お問い合わせ

ステンレス容器の使用時に発生しやすいトラブルやお困りごとについて、対処法をご紹介しました。

ここに記載がない内容など、ステンレス容器の使用に関してお困りごとがあればお気軽にお問い合わせください。

お客様の使い方に適した製品や加工をご案内いたします。

作業コストを削減!目的別にステンレス蓋のカスタマイズ事例を紹介
2020/03/14 09:00

MONOVATE株式会社では、お客様の課題を解決するステンレス容器を作り続けてきました。
製作している容器のほとんどはオーダーメイド品を依頼されたお客様の課題に適した設計を行っています。

今回は容器の蓋部分に注目して、お客様の課題を解決するカスタム蓋加工についてご紹介します。

撹拌の際に異物混入を防ぐ蓋

材料を混ぜるために容器の口を開けたまま撹拌機を設置している方がいるのではないでしょうか。
MONOVATEではお客様の衛生グレードを確認したうえで、異物混入を防ぎながら撹拌できるように蓋を設計します。

切り欠き

蓋に撹拌機の軸サイズに合わせて太めのスリットを入れた部分を切り欠きと呼びます。
容器を蓋で覆いながら、撹拌機を作動させることが可能です。
必要最低限のスリットを作る事で、空気中の埃などの異物が容器内に入ることを防ぎます。

割蓋

一枚の蓋を半分に割り、蝶番で接続した蓋です。
蓋を固定しているクリップを全て外さなくても、開口側のクリップを外すことで中身を確認できます。
割蓋を設置することで、蓋の開放部分を少なくすることができるため、外気からの異物混入リスクを下げることができます。

開閉蓋

蓋の天板の一部分に扉を設置、開閉できるように加工した蓋を開閉蓋と呼びます。
この蓋は開放口のサイズが小さくなりますが、キャッチクリップを外さずとも容器内を確認できます。

のぞき窓の設置

容器内を確認するための窓です。圧力容器など開放ができない容器の内部を確認するために使用します。
窓の大きさは使用用途に合わせて選定できます。
容器内を照らすライトの設置や、ガラス内面を掃除するためのワイパーが付いたのぞき窓もあります。

重たい蓋の開閉をサポートする蓋

分割蓋

分割蓋は一枚の蓋を2つに割った蓋です。割蓋と似ていますが、蝶番で固定はしていません。
容器のサイズに合わせて蓋が大きくなり、標準の円盤形状の蓋では一人で持ち上げられない場合もあります。

このような時に、分割蓋であれば力作業の負担を減らすことが可能です。
2枚の蓋の設置部分には山型のプレートが付いていて、この山を重ねて隙間を隠すことで、蓋を閉めている間の異物混入を防ぎます。

重たい蓋は開閉補助

加圧・減圧用の容器は頑丈な構造にするために、蓋が大きく重くなります。
蓋の開閉作業自体が、指や手を挟んでしまうような危険な作業になりかねません。
開閉補助装置を設置することで片手でも楽に開閉できます。

移動金具の設置

人力で開閉が難しい蓋の場合、補助装置を設置する以外に、リフターで持ち上げるという方法もあります。
大きいサイズの圧力容器の蓋や、撹拌機が直接設置しているような容器は蓋を斜めに持ち上げることが難しいです。
そのような場合は、蓋に直接ブラケットを設置しリフターや、フォークリフトで上下に開閉します。

前工程、次工程と連携を取る蓋

ステンレス容器内に材料を投入する、または次工程に材料を送る。
容器で材料を調合するだけでなく、生産工程全体を考慮してステンレス容器をカスタマイズいたします。

ノズルの設置

ステンレス容器の蓋には様々なノズルが取り付けてあります。
お客様の仕様に合わせて、ノズルの個数、種類やサイズを変更できます。

今ある課題を解決します!

MONOVATEのオーダーメイド製作なら、お客様の課題に合わせて最適な製品を設計いたします。
蓋のカスタマイズだけでなく、容器の架台や、内面コーティングなど様々なカスタマイズが可能です。お客様の抱える問題を教えていただければ、経験豊富なスタッフが最適な容器をご提案いたします。
下記お問合せフォームより、お気軽にご相談ください。

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