技術コラム

キャッチクリップとレバーバンド 密閉度を比べてみました
2019/05/12 09:00

日東金属工業株式会社にはステンレス容器に蓋の種類がいくつかあります。
開放タイプが1種類と密閉タイプが2種類です。

ここであらためて密閉容器2種類を紹介します

キャッチクリップ(CTH型)

取り扱いが簡単なクリップタイプ。片手で締めることができます。
標準モデルのパッキンは容器の本体側に装着します。
容器の大きさに合わせて3~6個のクリップで蓋を固定します。

レバーバンド(CTL型)

着脱が簡単なレバーバンドタイプ。両手で扱う必要がありますが、着脱が素早く行えます。
パッキンは蓋側に装着します。
容器の大きさに関わらず、1本のバンドで蓋を固定します。

よくある質問「どちらの蓋が密閉に優れているの?」

お客様から頂くお問合せの中で、密閉容器に関する質問として「CTH型とCTL型、どちらの蓋の方が密閉度が高いのか」という質問を頂きます。
前提として、日東金属工業株式会社の密閉容器は「中に保存している液体や粉が外にこぼれない程度の密閉」を基準に設計されています。
容器内の気体が漏れない完全密閉を目的とした構造ではありません。

たとえばガスを発生する液体を保管する場合は、容器が傾いた際に中身の液体が漏れることはありませんが、保管中に容器内で発生したガスが漏れるということは十分にあり得ます。
気体までしっかりと閉じ込めたい場合は圧力容器をご紹介しております。

実際に容器の密閉度を比較するような実験を行いました。

実験概要は以下の通りです。

  • 湿度と温度が管理された部屋に容器を設置
  • 容器の中に、乾燥剤などにも使われている無水塩化カルシウムを入れておく
  • 一定日数放置した後に容器の重量を計測する

密閉容器とはいえど湿度管理された部屋に設置すると、空気中の水分が、蓋とパッキンのわずかなすき間を通して容器内に入り込みます。
そして容器内に入り込んだ湿気を、無水塩化カルシウムが吸収し、その吸収した分だけ重量が増えます。
密閉度が低い容器ほどたくさん湿気が入り込み、容器重量が大きく変化します。

このような方法を通して、容器の重量を測定することで、密閉度の比較ができることになります。

実験内容

使用した容器

  • クリップタイプ密閉容器(20Lタイプ)
  • レバーバンドタイプ密閉容器(20Lタイプ)

両方の容器に無水塩化カルシウムを1000g設置、温度20℃、湿度50%に管理された恒温恒湿室内に容器を静置し、所定時間ごとに質量を測定しました。(期間は60日間)?

実験結果

オレンジの線がクリップタイプのCTH-30、グレーの線がレバーバンドタイプのCTL-30です。
重量はレバーバンド式容器の方がより変化が小さいことがグラフから読み取れます。
つまり、クリップタイプとレバーバンドタイプを比べると、レバーバンドタイプの方が密閉度が高いということがこの実験から判明しました。
二つの密閉容器を比べると、密閉度の性能はおよそ2倍の差があるようです。

考えられる原因

気密を保つためのパッキンの素材は両容器共にシリコン素材を使用していたため条件は同じです。
おそらく、このパッキンを4個のクリップで押さえつけるか、蓋の円周全体をバンドで押さえつけるかという、封止性能の差がこのような結果を生んだと考えられるでしょう。

追加実験PTFEパッキン

日東金属工業株式会社の容器にはこのようなものも存在します。
耐薬品性の高いPTFE素材のパッキンを使用したPTFEパッキン付保存容器【CTH-PTFE】です。

PTFEパッキン付き保存容器の特長

PTFE素材はほとんどの薬品に侵されません。
危険な毒物として知られるフッ化水素酸ですら溶かすことはできないため、安心して薬品を保存することができます。
この容器は強い化学薬品を扱う際に最適なのですが、購入される方には「樹脂パッキンなのでゴム製のパッキンに比べ密閉性は劣ります。」という注意喚起をさせていただいております。

どのくらい密閉性が劣るのか実験してみた

さきほどのシリコンパッキンを装着した密閉容器と同じ条件で、PTFE付き保存容器の密閉度も調査してみました。

実験結果

クリップタイプ、レバーバンドタイプに比べて大きく密閉性が劣ることが明確になりました。
クリップタイプと比べると4倍以上、レバーバンドタイプと比べるとなんと9倍ほど密閉度に差があります。

素材だけで比較を行うと水蒸気透過性では、PTFE素材はシリコン素材の680倍湿気を通さないといわれています。(レインコートなどに使用されるゴアテックスという素材でもPTFEは使用されています。)
この数値だけを比べると、PTFE素材の方が密閉度が高くなる結果が出そうですが、実際の密閉性の傾向では逆転しました。
おそらく結果の差は、パッキンの固さにあると考えられます。

考えられる原因

シリコンパッキンはゴムのように伸縮性を持っているのに対して、PTFEパッキンは固く、伸縮性がありません。
固いパッキンは、伸縮性のあるパッキンに比べて蓋との密着性に劣ってしまいます。
素材自体は水蒸気透過性が低いため、パッキン自体を湿気が透過したということは考えづらく、固い蓋と固いパッキンの接地面を透過したと考えられるでしょう。

まとめ

結論として密閉度の高さにはこのような優劣があることが分かりました。

レバーバンドタイプ>クリップタイプ>>PTFEパッキン付保存容器

今回は湿気を利用しての実験なので、酸素やほかの気体に関しては別途実験が必要であると考えられます。
また、前提として密閉容器は液体や粉体がこぼれないように設計されております。

2種類の密閉容器を比較すると性能に2倍の差はありましたが、容器の重量が30日間で1g程度しか変化しなかったという実験結果であるともいえます。
気密性を重視した使用方法でなければ十分、保管・保存に適している容器であるといえます。
あくまでも参考数値程度にお考えください。

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