技術コラム

製薬業界の実績多数 最高グレードの電解研磨とは
2015/11/18 09:00

そもそも電解研磨とは

電解研磨とは、金属の表面から金属イオンを溶出させ、表面を平滑化させる研磨方法です。
これにより金属の表面に「油やバフ粉等の汚れを除去する」「微生物の付着を抑制する」といった機能を付加します。
またステンレスにおいては金属表面のクロム濃度を高め、耐食性を向上させる効果も。

表面からのコンタミ回避や耐食性を求める製薬メーカーでは、GMPやバリデーションの観点からも電解研磨が必須となっています。

▲ 電解研磨をかけたステンレスの表面は少し黒光りするような光沢を持ちます(写真中央のタンク)

電解研磨のメリット

電解研磨には以下のようなメリットがあります。

  • 通常の洗浄で取れない汚れを除去する
  • 汚れが残りにくく・落としやすくなる
  • 耐食性が向上し錆びにくくなる

通常の洗浄で取れない汚れを除去する

ステンレス鋼の圧延・プレスといった加工や、溶接後のバフ研磨で付いた油汚れを除去(脱脂)できます。

これらの汚れは複雑に変形したステンレスの表面に入り込んでおり、通常の洗浄で取り除くのは困難です。
電解研磨により表面の凸部分から溶けて平滑な表面になることで、汚れが表出し容易に除去できるようになります。

表面のイメージ図

素材表面

(荒々しい表面)
バフ研磨表面

(バフ粉、油の汚れ)
電解研磨表面

(汚れが無く滑らかな表面)

汚れが残りにくく・落としやすくなる

きれいな状態を保てるのは新品の時だけではありません。

前述のイメージ図から電解研磨した表面は非常に滑らかで、表面積が小さくなっていることがお分かりいただけるかと思います。
バフ研磨後で表面の凹凸が倒れ細かい隙間がたくさんあるような状態に比べ、何度か使用~洗浄を繰り返した後でも汚れが残りにくく・落としやすい清潔な状態を保つことができるのです。

また米国農務省の研究では、電解研磨を施した表面はバイオフィルム(微生物の集合体)が残りにくいことがわかっています。

このように、電解研磨をすることで衛生的な金属表面を容易に維持することができます。

耐食性が向上し錆びにくくなる

冒頭の文章と重なりますが、電解研磨は金属表面のクロム濃度を高めます。これをクロムリッチと言いますが、このとき金属表面は強固な不動態被膜で覆われ、耐食性が向上します。

不動態皮膜はステンレスに含まれる鉄が酸素と結合しようとする(=錆びようとする)のを防ぎます。ステンレス自体に元来備わったものですが、クロムリッチになることでより強固になるのです。

電解研磨のデメリット

電解研磨自体が金属表面に悪い影響を及ぼすことはないのですが、副次的なデメリット(リスク)があります。

  • 高価である
    当社の場合、バフ研磨で仕上げた容器の2~3倍程度の価格です。
  • 隙間に電解液が入り込むリスクがある
    設計段階から電解研磨をかけることを考慮し、隙間が少ない構造にする必要があります。

電解研磨にもグレードがある?

直接的なデメリットもなくいいことづくめの電解研磨ですが、適した手法を取らないと思うような効果を得られない事も。

電解研磨をしたステンレス容器なのに

  • 何度も洗浄を繰り返さないと使用できない…
  • 白い錠剤に汚れが付着し、黒っぽくなった…
  • 赤錆(ルージュ)が発生した…

これらは、電解研磨が不十分なために発生する現象です。
この違いは、電解研磨のかけ方で生じます。

ここからは、ステンレス容器メーカーである当社の電解研磨へのこだわりをご紹介します。

一般的な電解研磨の方法

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電解液(燐酸と硫酸の混酸液)が入った電解槽の両サイドに電極板を入れ、その間に製品を入れます。
製品に直流電気の+を、電極板に-を接続すると、電解液を通じて電流が流れ、製品に電解研磨がかかります。

この方法は細々とした部品などへの電解研磨に適していますが、当社で扱うようなステンレス容器には適していません。
内容物が直接触れる内面に電解研磨をしっかりかけたいところですが、この方法だと内面に流れる電流が弱い=電解研磨も弱くしかかからないのです。

日東金属工業による高グレードに仕上がる電解研磨の方法

日東金属工業では容器の内面にしっかりと電解研磨をかけられる方法をとっています。

一般的な方法との違いは電極板にあります。
容器の内面に寸法を合わせた専用の電極板を使用して、電解研磨をかけるのです。
より強く均一な処理が可能になり、電解研磨のもつメリットを存分に活かした容器に仕上がるのです。

容器に合わせた専用の電極板を用意できるのは、当社が容器の設計~制作~電解研磨を一貫して施工できるから。
これが日東金属工業の高グレードな電解研磨の秘訣になっています。

製薬会社へ電解研磨品の納入実績が数多くあります

電解研磨証明書の発行も可能ですので、お問い合わせください。

電解研磨を施したステンレス製品事例

最近やってます!インコネルタンク特注製作事例
2015/11/01 09:00

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弊社ではステンレスを使用した製品を製作しておりますが、最近ではインコネル(ハステロイ)製容器の設計・製作も増えてきました。

そこで今回は、完全オーダーメイドで製作・納入したインコネル製品の特注製作事例をご紹介します!

1.インコネルとは

インコネルとは、ニッケルを主として、クロムなど様々な成分を添加することで耐熱性や耐食性などを高めた合金のことをいいます。耐食性が求められる流量計や圧力計、耐熱性が求められる航空機のエンジンや発電所のタービンなどに使用されていますが、優れた特長がある一方で材料が高価であったり難切削材としても知られています。

※今回の製作事例でご紹介する製品はインコネル材のalloyC-276を使用しています。ハステロイC-276相当品のニッケル合金で、クロムやモリブデン等が含まれており、硫酸や塩酸などの酸化性雰囲気でステンレスに比べ優れた耐食性を持っています。

2. インコネルタンク(ハステロイタンク) 製薬メーカー様納入事例

お客様より「耐酸性のある撹拌タンクが欲しい」との事で、インコネルタンクを特注製作しました。
お客様が様々な材質で検討した結果、インコネルに決まったそうです。このタンクは調液工程で使用されます。(内容物など詳細は企業秘密とのことです。)

大きさ

キャスター脚付容器の高さが約1200mm、撹拌機を含めた全高が約1900mm。人と比較するとこのような感じです。

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インコネルタンク仕様

サイズ:約W665×D665×H1216mm
容量:100L(満水時130L)
材質:接液部インコネル(ハステロイC-276相当)、SUS304
仕上げ:内外面#400バフ研磨後、内面電解研磨
その他:撹拌機取付架台 / ステンレス製ポータブルミキサー(電気モーター/200V)※インコネル製の撹拌機軸と翼も付属。

インコネル製容器内面

バフ研磨後に電解研磨を施しました。
電解研磨によりバフ粉や油などの表面の汚れを落とし、滑らかな表面にすることで清浄性を向上させました。電解研磨によって表面に光沢が出ます。(縁の白色はPTFEパッキンです。)

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インコネル製蓋

蓋をしたまま撹拌機が使用できるように、蓋の一部を切り欠いています。
撹拌機を使わない時は切り欠き部にPTFE製のカバーをします。
こちらの蓋は、蓋をしたまま一部が開閉できるようになっています。加工例:「割蓋C」参照
※取っ手やクリップなどはSUS304製を使用しています。

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撹拌機用架台(制御盤付き・移動式)

専用の架台を製作しました。
大きさ:約W900×D890×H1600mm(最大時)
材質:SUS304

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ステンレスだけじゃない!
インコネル(ハステロイ)製品のオーダーメイドもお任せ下さい!

弊社のステンレス容器と同形状ならほとんどがインコネルやハステロイで製作できます。
今回ご紹介した製品のような「完全オーダーメイドでの設計・製作」も承っております。

> ハステロイ製タンクの事例を見たい方はこちら

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図面不要!簡単なイラストや図でご希望のタンクをお知らせください。

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