密閉に欠かせないパッキンの材質と特性
2016.9.5
ステンレス容器の密閉にはパッキンが必要です。
容器を安全に正しくお使いいただくためには、パッキンとの相性も重要です。
今回は、ステンレス容器に使われているパッキンの材質についてご紹介します。
主なパッキン材質
シリコーンゴム(Q) -Silicone rubber- (弊社名:シリコン)
耐候性、耐薬品性、非粘着性、耐オゾン性などの特性を持ち、
難燃性、撥水性、電気絶縁性などに優れています。
工業用途だけでなく家庭用品にも使われています。
使用温度範囲:-70℃~+200℃
弊社ステンレス密閉容器用パッキンの標準材質です。>シリコンパッキン
■耐候性
酸素、オゾン、紫外線に対する安定性に優れ、
長時間紫外線や風雨にさらされても特性はほとんど変化しません。

■耐薬品性
アルコールや希酸、希アルカリなどにはほとんど侵されません。
■撥水性
他のゴムより濡れにくく、防水シール材としても使われています。
■難燃性
炎を近づけても簡単には燃焼せず、着火した場合も煙や有毒ガスの発生がほとんどありません。
■非粘着性・非腐食性
離型性に優れており、離型剤としても使われています。
また、化学的に不活性で他の物質を腐食させません。
■透明性・着色性
シリコーン本来の透明性に優れ、着色できます。>カラーパッキン
着色した場合もシーリング材としての基本的な性能は変わりません。
×欠点
・強酸に弱い。
・非粘着性により一般の有機系接着剤ではほとんど接着できない。
・引っ張り強度・引き裂き強度・耐摩耗性などの外的な力学的要素に弱い。
・気体透過性が大きいため、気体を通しやすい。
(ただし水と水蒸気は分子の密度が異なるため防水性が悪いわけではない。)
・熱や紫外線で黄変することがあります。
パッキンがブヨブヨになる!?
パッキンと液体の相性によっては、パッキンが液体を吸収して膨張し、ブヨブヨになることがあります。
このことを「膨潤」と呼びます。これは液体がパッキンのゴムの分子間に入り込んでしまうことから起こります。
その他にも使用環境や液体との相性によってはパッキンに亀裂など劣化が生じる場合もありますので、
使用環境や液体に最適なパッキンを選定する必要があります。
フッ素ゴム(FKM) -Fluorocarbon rubber-
現在市販されているフッ素ゴムと呼ぶ場合、
フッ化ビニリデン系フッ素ゴム(FKM)のものを指すことが一般的です。
フッ素ゴムはゴム材料中で最高の耐熱性を持ち、優れた耐油性、耐燃料性、
耐薬品性を持つことから、自動車部品や化学プラントなど幅広い分野で
使用されている合成ゴムです。
■耐熱性
使用温度範囲:-10℃~+230℃
シリコーンゴムに比べ長時間シール性能が維持できるため、
高温部分のシールに使われます。

■耐油性
一部のリン酸エステル系の作動油を除き、鉱油のほとんどに高温まで耐えます。
×欠点
・耐寒性に劣る。
・他のゴムに比べて非常に価格が高い。
・有機酸、ケトン、エステル、アミン系の薬品には、耐性がない。
クロロプレンゴム(CR) -Polychloroprene rubber-
古くから使用されている合成ゴムです。
機械的強度、耐候性に優れ、それ以外の特性に対しても平均的で
バランスが良いため幅広く使われています。
難燃性、接着力(ゴムのりにした時)が強い、ガス透過率が低いなどの
特長もあります。
ウェットスーツなどでも使用されている材質です。
使用温度範囲:-35℃~+110℃
×欠点
・耐熱性に劣る。
・低温時に結晶化しやすく、低温時の使用には向いていない。

ニトリルゴム(NBR) -Nitrile butadiene rubber-
耐油性、耐摩耗・耐老化に優れた合成ゴムです。
特に耐油性に優れています。
圧縮永久ひずみ、引張り強さ、耐磨耗性にも優れ、シール材や手袋の材料、
自動車部品など様々な分野で使用されています。
使用温度範囲:-10℃~+120℃
×欠点
・耐熱性に劣る。
・ケトンやエステルなどの極性溶剤には使用できない。
・耐候性(耐オゾン性など)に劣る。

なぜタイヤは黒色なのか

タイヤやウェットスーツ、パッキンなど、黒色のゴム製品を良く見かけます。
特にタイヤは黒のイメージが強いですね。
これはゴムの強度や耐摩耗性を向上させるためにカーボンブラックという
黒色の炭素の微粒子を配合しているというのが主な理由です。
ただし現在ではカーボンブラックの代わりにホワイトカーボンと呼ばれる
白色のシリカを補強剤として使っているものも多くなり、
黒色以外のゴム製品も増えています。
エチレンプロピレンゴム(EPDM) -Ethylene propylen diene rubber-
耐薬品性、耐寒性、耐オゾン性、耐老化性にすぐれた合成ゴムです。
また、比重が市販ゴムの中で最も小さいなどの特長も持っています。
オゾンに強く老化しにくいことから、自動車部品や競技場のトラックなど
にも使用されています。
使用温度範囲:-40℃~+140℃
×欠点
・耐油性に劣り、一般的な鉱油には耐性が無い。

四フッ化エチレン樹脂(PTFE) -Polytetrafluoroethylene plastics-
フッ素樹脂とも呼ばれ、耐薬品性、耐オゾン性、耐候性に優れ、また最も摩擦が
少ない樹脂(プラスチック)で、他の材質のようなゴムではありません。
絶縁性も高く電気絶縁材としても優れた材料です。
非粘着性・低摩擦性(すべりやすい)により、摺動材としても使用されます。
フライパンのコーティングなどでも有名です。
このように優れた特性から様々な分野で使用されています。
■耐薬品性
どんな酸やアルカリ、有機薬品に対しても安定しており、
吸湿・吸水・膨潤もなくほとんど侵されることがありません。
■耐熱性
使用温度範囲:-100℃~+260℃
広い温度範囲にわたって長時間の使用に耐えることができます。
×欠点
・価格が高い
・一品毎に削り出しのため量産ができない。
・樹脂の為、パッキンとしてのシールが弱く密閉性に劣る。
・磨耗しやすい。
・非粘着性により接着剤による接着ができない。

パーフロ(FFKM) -Perfluoroelastomer-
PTFEは優れた耐薬品性を持っていますが、密閉性には劣るのが難点です。
そこで、耐薬品性と密閉性を求めたい場合はパーフロを採用します。
パーフロはパーフルオロエラストマーとも呼ばれ、フッ素ゴムの一種です。
ゴムパッキンの中で最も耐薬品性・耐熱性に優れています。
性能も良く需要も限定的となることから非常に高価なゴムです。
パッキンの特性を比較する
今回取り上げた6種の材質について、特性を比較しました。
■耐熱性(優れている>劣っている)
四フッ化エチレン樹脂(PTFE)>フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(Q)>エチレンプロピレンゴム(EPDM)>ニトリルゴム(NBR)>クロロプレンゴム(CR)
■耐寒性(優れている>劣っている)
四フッ化エチレン樹脂(PTFE)>シリコーンゴム(Q)>エチレンプロピレンゴム(EPDM)>クロロプレンゴム(CR)>フッ素ゴム(FKM)>ニトリルゴム(NBR)
■耐油性(優れている>劣っている)
四フッ化エチレン樹脂(PTFE)>フッ素ゴム(FKM)>ニトリルゴム(NBR)>シリコーンゴム(Q)、クロロプレンゴム(CR)>エチレンプロピレンゴム(EPDM)
■耐候性(優れている>劣っている)
四フッ化エチレン樹脂(PTFE)>フッ素ゴム(FKM)>シリコーンゴム(Q)>エチレンプロピレンゴム(EPDM)>クロロプレンゴム(CR)>ニトリルゴム(NBR)
■機械的強度(優れている>劣っている)
四フッ化エチレン樹脂(PTFE)>クロロプレンゴム(CR)>ニトリルゴム(NBR)>エチレンプロピレンゴム(EPDM)>フッ素ゴム(FKM)>シリコーンゴム(Q)
■耐摩耗性(優れている>劣っている)
四フッ化エチレン樹脂(PTFE)>クロロプレンゴム(CR)>ゴムニトリルゴム(NBR)>シリコーンゴム(Q)>エチレンプロピレンゴム(EPDM)>フッ素ゴム(FKM)
■反発弾性(優れている>劣っている)
四フッ化エチレン樹脂(PTFE)>シリコーンゴム(Q)>クロロプレンゴム(CR)>ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)>フッ素ゴム(FKM)
■気体透過性 (透過しやすい>透過しにくい)
四フッ化エチレン樹脂(PTFE)>シリコーンゴム(Q)>エチレンプロピレンゴム(EPDM)>クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)>フッ素ゴム(FKM)
パッキンはPTFEで良いのでは?
PTFEは上記の特性に対して他のゴムよりも優れていますが、
樹脂であるために密閉性に劣るという弱点があります。
また、他パッキン材質に比べ値段が高く、採用しにくい点も挙げられます。
ご注意
この記事は一般的な参考データであり、使用条件や環境により変わることがあります。
弊社では使用環境や内容物、コスト面などからお客様に応じて最適なパッキン材質を選定致しておりますので、
お気軽にお問い合わせください。
【関連資料】
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パッキンサンプル のご請求
パッキン選定にあたりサンプルをご用意しております。
※ステンレス容器用のパッキンですので、ステンレス容器をご使用中もしくはご検討中の方に限らせていただきます。
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